ニュースの概要
米国と欧州の人材派遣会社は、長く続いた低迷のあと、採用活動がゆっくりと上向き始めている。景気の先行きが読みにくいなかでも、企業は止めていたプロジェクトを再開しつつある。ただしその際、正社員を増やすのではなく、派遣や契約の人材で穴を埋める動きが強い。人を抱え込むリスクを避けながら、必要な専門スキルだけを必要な期間だけ確保したいという判断である。海外就職の紹介会社にとっては、恒久的な転職支援に加え、特定案件向けの短期・専門人材の紹介が新しい成長分野になる。企業側も需要の変動に合わせて人員を調整しやすくなる。
引用元: 米欧の人材派遣業界に回復の兆し、企業が一時的な人材活用を拡大(Staffing Industry Analysts)
分析・見解
派遣の回復は、景気の自信ではなく慎重さの表れ
人材派遣の求人は、景気の体温計として使われてきた。企業は景気が良くなると、まず派遣を増やし、確信が持てた段階で正社員に切り替える。これが従来の順番である。
今回の回復も、この見方では「好転の初期サイン」に映る。ただ、中身を見ると少し違う。企業は正社員を増やす自信がないまま、止めていた案件だけを動かしている。つまり派遣の増加は、強気ではなく慎重さの裏返しである。
正社員への切り替えが起きにくくなる理由
かつては、派遣で試して合えば正社員にする「お試し雇用」の流れが目立った。しかし今は、最初から期間を区切った契約で完結させる企業が増えている。理由は三つある。
一つ目は、解雇や退職にかかる費用と時間の重さだ。欧州では特に、人員整理に長い手続きが要る国が多い。二つ目は、案件ごとに必要なスキルが変わる点である。AIの導入や基幹システムの入れ替えのような仕事は、終われば同じ人材の出番が減る。三つ目は、予算が四半期単位で見直される点である。固定費を増やさず、案件費として処理できる契約人材は、財務担当者にとって扱いやすい。
似た局面は2010年代前半にもあった
2008年の金融危機後にも、似た局面があった。当時、米国では雇用全体の回復に先立って派遣業が先に伸び、その後に正社員が戻った。ただし今回は、戻る先が元の正社員とは限らない。リモート勤務が定着し、国境をまたいで契約できるため、「地元の派遣会社から地元の人材を借りる」という前提が崩れている。独自の視点として強調したいのは、競争相手が同じ国の求職者ではなく、世界中のフリーランスになった点である。
紹介会社の収益構造が変わる
紹介会社の稼ぎ方も変わる。正社員の紹介は、成功すれば大きな手数料が入るが、決まるまでに時間がかかる。一方、短期の専門人材は単価が高く、案件が連続すれば安定した収入になる。
今後は、一人の人材を複数の案件に渡り歩かせられる会社が強くなる。求職者の側から見ても、一つの会社に長く勤めるのではなく、数か月単位の仕事を積み重ねて経歴を作る道が現実的になる。
ビジネスへの影響
採用側は「常勤か契約か」を案件ごとに決める
企業の意思決定者は、人員計画を「何人雇うか」ではなく「どの仕事を社内に持ち、どの仕事を外に出すか」で考え直す必要がある。目安は、三年以上続く業務は正社員、一年以内に終わる案件や、特殊な技術が要る仕事は契約人材とする分け方である。
ただし契約人材に頼りすぎると、ノウハウが社内に残らない。引き継ぎ資料の作成と、終了時の報告会を契約条件に入れておくと、知識の流出を抑えられる。
海外就職を目指す人は短期案件を入口にできる
海外で働きたい人にとって、短期の契約は入りやすい入口になる。正社員採用はビザの支援や長期の面接を伴うが、案件単位の契約は、必要な技能が合えば決まりが早い。
実務では、自分の専門を一行で説明できる状態にしておくことが重要である。たとえば「経理システムの移行経験が三件ある」といった具体性が、紹介会社の目に留まる。複数の紹介会社に登録し、案件の傾向を比べながら動くのがよい。
紹介会社は契約人材のプールづくりを急ぐ
紹介会社は、短期案件に即応できる候補者の名簿を持つことが競争力になる。AIによる経歴の照合を使い、案件が出た翌日に候補を三人出せる体制が求められる。企業との契約も、手数料型から稼働時間に応じた課金型へ見直す余地がある。