ニュースの概要
ニュージーランドの雇用裁判所が、海外にいる求職者から就職と引き換えに集められる上乗せ料金について、国内法の禁止規定が及ぶとの判断を示した。争点は、お金がどこで支払われたかである。裁判所は支払い場所よりも、その支払いが同国での仕事と結び付いているかどうかを重くみた。支払いを国外に置けば規制を避けられるという抜け道を狭める内容であり、名目が何であれ、実態が就職の対価かどうかが問われる構図である。海外の仲介業者を通じて高額な費用を求める採用のやり方が問題になるなか、受け入れる側の雇用主にも、使っている仲介業者の料金の取り方を確かめる責任が意識される。
引用元: ニュージーランド裁判所、海外で徴収した就職関連手数料も違法対象と判断(B2B News)
分析・見解
支払い場所ではなく何の対価かで線を引いた
従来、海外の仲介業者が現地で受け取る料金は、受け入れ国の法律が届きにくい場所にあった。支払いは国外、仕事は国内。この分断が、高額な費用を求める慣行を支えてきた面がある。
今回の判断は、その前提を崩した。見るのは口座の所在地ではなく、支払いが国内での就職と結び付いているかどうかである。名目が紹介料でも手続き費でも、実質が仕事の対価なら同じ線の内側に入る可能性がある。形ではなく実態で見る考え方だ。
日本の介護現場にも通じる費用の見えにくさ
この構図は、日本の外国人介護人材の受け入れとよく似ている。本人が母国の送り出し機関や仲介業者に費用を払い、その借金を抱えたまま来日するケースは、以前から課題として指摘されてきた。日本の職業安定法も、有料職業紹介では原則として求職者から手数料を取ることを認めていない。ただ、海外で完結する支払いは、日本の側からは見えにくい。
見えにくい費用は、働き始めてからの離職や職場への不信につながりやすい。採用コストを紹介料で払ったつもりでも、裏で本人に重い負担が回っていれば、定着率という形で跳ね返ってくる。
規制を強めても費用は別の名目に姿を変える
規制が強まると、料金は名前を変えて残りやすい。語学研修費、書類作成費、渡航準備金といった形に分けられると、一見して就職の対価には見えなくなる。今回の判断が重いのは、名札ではなく結び付きを問うたからだ。逆にいえば、契約書や請求の流れといった実態を示す証拠が、今後の争いの中心になる。
人材の国境を越えた移動が増えるほど、受け入れ国が国外の費用に目を向ける場面は増えていくと私は見る。
本当の論点は採用コストを誰が負うかにある
本人が払う就職費用は、働く前に賃金の一部を差し出しているのと同じだ。本来は採用する側が負うべきコストを、立場の弱い本人に移し替えている構図である。この見方に立つと、規制の矛先は仲介業者だけでなく、採用によって利益を得る側にも向いていると読める。仲介業者に任せたから知らない、という説明は通りにくくなっていく。
ビジネスへの影響
仲介業者の料金体系を契約前に文書で確認する
まず、利用中または検討中の仲介業者に、求職者から費用を受け取っていないかを書面で確認したい。確認する項目は三つある。求職者への請求の有無、名目を問わない費用の内訳、返金の条件である。口頭で「取っていません」と言われただけでは足りない。
契約書には、求職者から不当な費用を取らないこと、違反が分かれば契約を解除できることを明記しておくと安全だ。紹介料が相場より極端に安い業者にも注意がいる。不足分を別の場所から回収している可能性があるからだ。
入職後の面談で本人の負担額を把握する
書面だけでは見抜けない部分は、本人への聞き取りで補う。入職後の最初の面談で、来日や就職までに本人が払った費用を、責めるためではなく把握するために尋ねる。借入が残っていれば、返済の状況も分かる。負担が重いと分かれば、早い段階で仲介業者に是正を求められる。
聞き取りは通訳を交え、本人が不利益を恐れず話せる場で行うことが前提になる。
費用は自社の採用コストとして持つ発想に切り替える
本人負担をなくせば、その分の費用は事業者が適正に払うことになる。ただ、早期離職による再募集の費用や、現場の教育負担を考えると、最初から適正な費用を払って定着する人を迎える方が、総額は小さくなりやすい。取引先や利用者の家族から見ても、人の扱いが透明な事業者は信頼を得やすい。なお、日本の法令に照らした判断は、社会保険労務士や弁護士など専門家に相談してほしい。