ニュースの概要
米国の人材紹介会社Hire With Nearが、中南米でソフトウエア技術者を採用する米企業の動向を調べた。300件の採用相談を分析したところ、約半数の企業が、遠く離れたオフショアのチームや外部の開発会社から、時差の小さいニアショア人材へ切り替えていた。切り替えの理由として、全体の30%がオフショア体制からの転換を挙げている。中南米は米国との時差が通常0〜3時間にとどまり、アジアや東欧より日中に会話しやすい。人件費の安さだけでなく、連携のしやすさが選ばれる決め手になりつつあることを示す調査である。
引用元: 米企業、ソフトウエア人材の採用をオフショアから中南米のニアショアへ移行(EIN Presswire / Hire With Near)
分析・見解
安さ競争から、同じ時間に働けるかどうかの勝負へ
オフショア開発の売り文句は、長く人件費の安さだった。ところが今回の調査は、企業が価格表より時計を見始めたことを示している。時差が0〜3時間なら、朝の打ち合わせに全員が出られる。疑問が出たらその日のうちに解決できる。時差が10時間を超えると、質問の返事が翌日になり、直す作業がもう1日ずれる。これが積み重なると、安い単価で得をした分が、待ち時間と手戻りで消えていく。
外部の開発会社に任せる形が、なぜ嫌われ始めたか
注目したいのは、移行の理由に「オフショアの開発会社をやめたい」という声が含まれる点である。開発会社に丸ごと頼む形は、仕様を書いて渡し、完成品を受け取る流れになる。この方式は、仕様が固まった仕事には向く。しかし今のソフトウエア開発は、作りながら方針を変えるのが当たり前になった。仕様書を介した間接的なやり取りでは、変更のたびに契約や見積もりの調整が要る。そこで企業は、自社の一員として直接やり取りできる個人の技術者を求めるようになった。ニアショアの人材は、まさにこの形で雇われることが多い。
日本にとっての類似例は、アジア近隣国との関係である
この構図は日本にも当てはまる。日本から見れば、ベトナムやフィリピンは時差が1〜2時間で、いわば「日本にとってのニアショア」にあたる。実際、日本企業がベトナムの技術者を採用する流れは以前から強い。米国で起きていることは、距離の近い国から人を探すという日本の経験則が、世界の標準に近づいているとも読める。ただし、時差が小さいだけでは足りない。言語、商習慣、契約ルールを合わせる手間は残るため、距離の近さは出発点にすぎない。
人材紹介会社の役割は、探す人から、続く関係をつくる人へ
今回の調査を出したのが人材紹介会社である点も見逃せない。ニアショアの採用は、人を紹介して終わりではない。給与の支払い方法、現地の雇用ルール、税の扱いなど、事務の壁が多い。この壁を代わりに越える仕事に価値が生まれている。紹介手数料だけで稼ぐ従来型の事業から、採用後の運用まで支える事業へ、重心が移っていく可能性が高い。
ビジネスへの影響
海外人材を選ぶ基準に、時差と会話量を加える
海外の技術者を検討するときは、単価だけで比べないほうがよい。最初に、毎日どれだけの時間が重なるかを数える。重なりが4時間以上あれば、日々の相談は問題なく回る。2時間以下なら、会議の設計や文書の書き方を変える必要が出てくる。この追加の手間も費用として見積もると、安く見えた選択肢が割高だったと分かることがある。小さな案件で数か月試し、連絡の遅れと修正回数を記録してから、本格的に広げるのが安全である。
人材紹介の現場では、採用後の支援を商品にする
人材紹介を営む事業者にとっての示唆は明確だ。企業が知りたいのは、候補者の経歴よりも、入社後に困らない仕組みである。たとえば、ビザや就労手続きの案内、住まいや生活の相談、入社後3か月の面談といった支援を、料金に含めて見せる。これは外国人材を扱う日本の紹介会社にも当てはまる。採用の成功を「内定」ではなく「半年後も働いていること」で測ると、顧客の信頼が残りやすい。
外部委託と直接雇用は、仕事の性質で分ける
最後に、すべてを直接雇用に変える必要はない。仕様が固まった単発の仕事は、外部の開発会社が今でも効率的である。方針が頻繁に変わる自社製品の開発は、直接雇用か、それに近い形が向く。仕事の性質で使い分けるという判断軸を、社内で言葉にしておくとよい。